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「悪い女」見ました。映画です。キムギドクの昔の映画です。キムギドクですから韓国映画です。
映画はキムギドクだからそりゃ面白いです。僕も悪い女の映画撮りたいです。
映画を見ながらいろんなこと考えますがね、思い出すのは釜山に行った時のことです。
「花影」って映画の助監督した時に釜山に行ったのです。あれはもう4年くらい前の話。
僕は助監督のセカンドだったので俳優部、衣裳部、メイク部さんと行動を共にして同じ車で移動してました。(そういうもんなんです)
その車を衣メ俳車なんて言います。略してそんな言い方します。衣メ俳車は俳優さんの支度をしなくちゃいけないので撮影本隊より早く出発します。
釜山にも衣メ俳車が用意されてました。10人乗りのワゴン車で張本を若くしたような青年がドライバーでした。25ぐらい。
僕は韓国語話せないし、彼も日本語話せないし、お互いの英語も怪しいのでほとんど会話はしませんでした。
彼は行く先を韓国スタッフに言われて黙々と運転していました。これが繊細な運転でした。見た目とは裏腹に
とっても丁寧な運転する。撮影現場が山の方にあったりしてデコボコした道もたくさんあったけど、そのデコボコを
ゆっくり優しく乗り越えて行く。あんなに丁寧な運転する車に乗ったのは初めてぐらいな感じでした。
様子を見てるととってもシャイで真面目な性格のようです。体つきとかはいかついんですけどね。
ドライバーさんは撮影中は基本的に車で待機してます。
釜山での撮影が始まって数日後、物を取りに一人車に戻ると運転席は無人でそのシートに小さなスケッチブックが
置かれていて、その中身がチラリと覗いてました。見るともないし見るとそれは木のスケッチでとっても細かく
枝葉が書かれているのです。かなりハイレベルな絵です。
って書いてて思い出した。だから思い出したんだ。いや、「悪い女」でも「悪い女」が上手な絵を描いてましたかんね。
だから思い出したんだな。
本文に戻ります。
僕はいつも助手席に乗ってました。撮影が終わり現場から移動する時、運転席の彼にスケッチブックを指差して「ベリー グッド
ピクチャー」って言うと、照れくさそうな笑みを浮かべてスケッチブックを隠しました。
彼は無口な性格なのかなと思いました。日本人ばっかり乗ってる車の会話に入れないから無口なのではなくて
もともと無口な性格な感じがします。
僕自身くだらないことをペラペラ喋ってしまう傾向にあるので、こういう無口な人には憬れます。
けど、更に数日後、彼が他の車のドライバーの青年とふざけあってじゃれあってるのを目撃しました。
あぁそういう面もあるんだなぁと思ってちょっと見てると、こっちに気づいてばつが悪そうにふざけるのをやめたのでした。
何だか助手席に乗るのが楽しくなってきました。若き張本くんとは全然会話が成立しないけど、それはそれでいい感じです。
韓国編の撮影は10日程で終わりました。
最後に空港まで彼が送ってくれました。「カムサハムニダ」なんて言って別れの挨拶をしてると張本くんが僕を
いざないます。何だろうとついて行くとそこは自販機の前でコインを入れて好きなの押してってジェスチャーを
するのです。カップのコーヒーのボタンを押して、彼のおごりのコーヒーを飲みました。
あったかいコーヒーを飲みお礼を言いました。彼はまた照れくさそうに微笑むのでした。
んなこと思い出した。
いい奴だったなぁ。