バカな頭で考えた!

新しい人

新しい人なのか古い人なのかと言われれば、その中間の古い人よりってことだと思うけど。

いや、それは自分の年齢の話だ。

中華屋に行った。ビールが飲みたくてお腹も空いていて中華屋を探して歩いているといい雰囲気の

中華屋があった。少し汚めのよくあるこじんまりした中華屋さん。表のメニューを見るとセットメニューも充実している。

店に入ると一階と二階があり、一階はカウンター三席と二人がけのテーブルが三つ。カウンターではおじさんが一人

ニラレバ定食みたいなのを食べている。ほぼ同時に店内に入った二十代後半男子二人はテーブルに座り、僕はカウンター

かテーブルかと思ってると店のおじさんがテーブルにどうぞと言うのでテーブルに座った。

とりあえず生ビールを頼みメニューをにらむ。

生ビールは二階から下りて来た中国人のお姉ちゃんが片言の日本語で「ドーゾ」と運んで来た。

どうやらビールのサーバーは二階にしかないらしい。思ったよりせまい店内だ。

ちなみに一階で働くおじさんは日本人だ。というか片言の日本語ではなくごく普通の日本語を話している。けど、ひょっとしたら日本語堪能な中国人かもしれない。いや、そんなことを言うのなら僕にビールを運んで来た中国人のお姉ちゃんは

片言の日本語を話してるだけで本当は日本人かもしれない。

なんて思ったが、それは実はその時制では考えてなく、今パソコンでこの文章を打ちながら思ったことだ。

本当の俺は、今だって本当の俺だけど、その時中華屋にいた本当の俺はビールを飲みつつメニューをにらみ

ラーメンと天津飯のセットというのを頼む気持ちにほぼなっていたところだった。

しかし、本当の俺は、その本当の俺というのは、今こうしてパソコンに向かってる俺だが、生ビールを頼んで、

それが到着する前にラーメンと天津飯のセットを頼んだような気がしているのだ。

時制がごっちゃになっている。

しかし、こうも思う。そもそもこの文章を書こうと思った主旨からすれば、それは些末なことで生ビールがくる前に

ラーメンと天津飯のセットを頼んだのか、生ビールが来てからラーメンと天津飯のセットを頼んだのかそんなことは

どっちでもいいのだ。

しかし、こうも思う。というか時折思い出すのだけど、小学校一年生の時のことだ。よく作文を書かされていた。

そして、その作文は先生が良いものをいくつか集めてわら半紙に刷られて配られていた。毎月のように配られていたと思う。

というかそこなのだ。「毎月のように配られていたと思う」という書き方なのだけど、それは「毎月のように配られていた」と書いていいのだ。というか書ける。問題ないと思う。そして今なら書ける。

そして、その作文は先生が良いものをいくつか集めてわら半紙に刷られて毎月のように配られていた。

書いた。

書いたぞ!

と、今なら書けるけど当時は書けなかった。作文を書く時に正確に書かなくちゃいけないと思い「林くんは「てんしんはんがたべたい」というようなことを言った。」といった書き方しか出来なかったのだ。「林くんは「てんしんはんがたべたい」と言った。」と書けなかった。本当にそう言ったか分からないから。本当の林くんは「てんしんはんがたべたいでかんわ」って言ってたかもしれない。ちなみに「たべたいでかんわ」は「たべたくてあかん」という意味の名古屋弁で「食べたくて我慢出来ない」「食べたくてしょうがない」みたいな意味で使う。

あぁこんなことを書くつもりじゃなかった。

と、ふと我に帰る。

しかし、ここまで来たから書く。

書く。

書くよ!

毎月配られるわら半紙に僕の作文が載る事はなかった。それはとても残念なことだった。もう二回も載ってる友達がいるのに僕のは載らない。

で、ある日考えた。友達の作文を読んでいると何だか言い切っている。

「はやしくんはなきそうなかおで「てんしんはんがたべたい」と言った。」

作文がいさぎよい。そうかもしれない、そうじゃないかもしれないことを、そうだと言い切ってる。

「なきそうなかお」って本当にそんな顔してたか分からないけど「なきそうなかお」して「てんしんはんがたべたい」

と言う林くんには興味がわく。

どうして、そんなに「てんしんはん」が食べたいの林くん?

作文を読んだ俺は隣の席に座る林くんに聞くだろう。

隣の席に座る林くんは半ズボンの足をブラブラさせながら

「え、わかんない」

こう答えるさ。

そうさいつだって林くんの心はわかんないんだ。

って、しかし俺はこの俺はわかんない林くんの心を描く気持ちは毛頭なかった。

そんな気持ちは毛頭ないぜ。

だって毛頭の文章、いや冒頭の文章を読んでおくれ。

新しい人なのか古い人なのかと言われれば、その中間の古い人よりってことだと思うけど。

って書き出しだ。ってコピペしたんだけど。

と、このまま文章を続けようかとおもったけど、やっぱり書く。

この三行前の毛頭と冒頭のしゃれに君がくすりと笑ってくれるとうれしいよ。

書いちゃった。

てか君って誰だ。そんな人はいない。しかし思えば架空の君に向かって文章を書いてる気がする。するぞ。

じゃぁ映画はどうなんだ。誰に向かって映画を撮ってるんだ。

ふむ。

それはまた別の機会にしよう。

あぁ小一の俺よ。君はこんなに適当な作文をかくおじさんになったぞ。どうだがっかりだろ。

さて話を元に戻す。いつまでもそれてるわけにはいかない。

おじさんになった俺は中華屋でビールを飲みながらラーメンと天津飯のセットを待っていた。

はい、その時制に戻った。

ほぼ同時に入った二十代後半男子達ははなじみらしく慣れた感じの注文をした後で「リスペクタブルって有名な曲なの?」

なんて話してる。

そうだここは水道橋の中華屋。東京ドームの近く。ローリンストーンズのライブの後だ。ライブ前半でミックジャガーが「スペシャルゲストー!」としてステージに呼び込んだのが布袋寅泰で何だかリクエストでこの曲をやるみたいなこと言って、英語だからなおさら「みたいなこと言って」だ。日本語より更にもっと「みたいなこと言って」だ。まぁ、それはいい。こんなことばっかり言ってたら文章が前に進まない。進まないったら進まない。とにかくミックジャガーが「リスペクタブルー!」と言い演奏が始まったのだ。布袋がうれしそうにそして緊張した顔つきでギターを弾いていた。

幸せだったろうなぁ布袋。と思う。一生の思い出だろう。

斜め後方のその男子達の会話に耳をかたむけながらビールを飲んだ。ほどなくラーメンと天津飯が来て食べ始める。

ごくごく普通のラーメンと天津飯。天津飯のあんは赤い色をしてる。そんなタイプの天津飯。

ラーメンをすすり天津飯を食べビールをグビリ。ミックジャガーは絶対しないぜこんな食事。

と、おじさんが一人で来店。おじさんはテーブルでもいいですよと店のおじさんに言われたけど、ここでいいよと

カウンターに座り、座るやいなや「生ビール」と言う。もう心に決めてた系だ。おじさんは生ビールを飲む気マンマンで

この店にやって来た。ストーンズ帰りではなさそうだ。店のおじさんは「生ビール一つ」と二階にいる中国人のお姉ちゃんに向かって叫んだ。そうだ。この店は二階にビールサーバーがあるのだ。「はいー」と答える中国人のお姉ちゃんの声がする。と、厨房に行きかけた一階のおじさん店員は「新しい人ねー」と叫んだ。

新しい人。

新しい人。って。

ようやく本題。

あのおじさんのお客が「新しい人」なら俺は「古い人」だ。

「古い人」か。

ほんの十分ほど先に店に入っただけで俺は古い人。

もし俺がこの生ビールを飲み干しおかわりを注文したら、そんなことをしたのなら、

あの店員おじさんは二階に向かって「生ビール一つ」と叫び、更に「古い人ねー」と追い打ちをかけるのだろうか。

それは、そんなことは、毛頭に述べたように、いや冒頭に述べたように、俺は新しい人から古い人に

仲間入りしようとしているそんな年齢の男だ。それはわかってる。

しかし、あのおじさんに

「古い人ねー」

と言われたくない。言われたくないもんね。

しかしこうも思う。もし本当に俺がおかわりを注文したら何て言うんだろう。あのおじさんは。

それを確かめたい気もする。確かめてどうってことでもないけど。「古い人ねー」と言われてもがっかりだけど

かと言って「古い人ねー」と言われなくて別の言い方をされてほっと胸をなでおろしても、それはそれでがっかりだ。

いずれにせよがっかりか。

いや、それならいっそ「古い人ねー」って言われて「がっかり俺」って思ってる方がいい。

さてどうしたものか。天津飯もラーメンの残り数口、生ビールも残り数センチ。

生ビールのおかわりを頼むのか俺?

俺は自問自答した。どうする俺?

「古い人」と言われるのか言われないのか。

しかし、俺はこうも思った。ラーメンをすべる箸でたぐり、あぁそうなんだ、なんでプラスチックの箸なんだこの

店は。いかにも割り箸な店なのに。

いかん、もう華僑、中華屋だけに、いや佳境なのに脱線だ。

もとの線路に乗ろう。乗るよ。

ラーメンをすべる箸でたぐりながら考えた。

なぜ「新しい人」と言ったのか。普通はどうか?普通は「ご新規様」って言うんじゃないか。じゃぁ何故言わない。

それは多分「ご新規様」って言っても上の中国人のお姉ちゃんには伝わらないんじゃないのか。伝わらなかったんじゃないのか。そんなことが何度かあったのかも。それで考えたおじさんは「新しい人」と言うようになったんじゃないか。

俺はそう思った。そんな気がした。

ドアが開き新しい客が来た。「4人ですけど」

店員おじさんが「4人はちょっと」

ストーンズ帰りっぽい新しい客たちは残念そうだ。きっとビール飲みたくてしょうがないんだろう。

いや大丈夫。俺はもう完食しビールも飲み干した。古い人は帰るよ。

で、店を出た。

だから俺がもし二杯目のビールを頼んだら、そんなことをしたのならば「古い人ねー」

と呼ばれたかどうかは定かではない。

定かでないね。

こんなことを書いてみた。

なぜにこんなことを書くのだろう俺。

こんな作文じゃきっとわら半紙に載せてもらえないだろう近藤先生。

 

 

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