宗吉っつあん »
荒川にあらちゃんが出たということを知ったのは山形の鶴岡のそば屋にいた時のこと。
店内のテレビがそんなニュースを呑気に伝えていた。
あざらしが荒川に浮かんでた。
ついさっき鶴岡の水族館であざらしを見たばっかりだった。
あざらしは可愛かった。
たまちゃんはどうしてるんだろう?
と思った。
と、横にいた荒川君が
「あらちゃんは実はたまちゃんかもしれないんです」
って言った。
荒川君が横にいたのです。
荒川君は「セバスチャン」と「あまっちょろいラブソング」の助監督をしてくれた生真面目な青年です。
見た目の見るからにそんな感じ。
中国語が堪能です。
荒川君が鶴岡に居たのは、前日まで鶴岡の庄内映画村で南三陸町の子供たちが映画を撮ってたのをメイキングで撮影してたからで。
その撮影の監修は冨樫森監督です。冨樫監督は僕のはす向かいに座ってビールを飲んでます。他には撮影の鈴木くん。役者の吉田君、岡本さん、朝倉さん。そんな面子で中華そばを待っているそば屋のテレビで流れたのが荒川のあらちゃんの映像。
平和な昼下がり。
世の中いろいろあるけど平和なそば屋の昼下がり。
しかし思う。
多摩川のたまちゃんは分かるとしても、荒川だからあらちゃんってのはいかがなものか?
そこで思った。荒川君は何て呼ばれてたのか?
だから荒川に聞きました。
「荒川。荒川は何て呼ばれてたの?」
荒川は答えました。
「荒川です」
生真面目に答えたよ荒川は。
「荒川です」
って。
涙が出ました。