「担々麺!」とおじさんは店に入るなりそう言った。
僕は焼きそばを食べ終えてお勘定をしようとしたところだった。
お店に入るなり希望の食べ物を言う男がいる。
僕には真似の出来ない男らしいふるまいだ。
男らしいおじさんは言った。「担々麺!」
と、店のおじさんは応えた「はいワンタン麺!」
ん?
これはやばい!
意思疎通が出来ていない。
担々麺とワンタン麺。
言葉は似てるがその内実はえらい違い。
お客のおじさんは担々麺食べる気マンマン。
お店のおじさんはワンタン麺作る気マンマン。
まずい事態だ。
どうしたものか?俺に何が出来るのか?
小さな無人島ひとつでごちゃごちゃもめてるこの世知辛いご時世だ。
平和を願う元首相は国賊扱いだ。
あの人は脇が甘いと思うけど脇をなめたらとってもスイーティーだと思うけど
そんなことしたくないけど。あんな人がいてもいいではないか。
威勢のいいことばかり言ってると取り返しのつかないことになるかもしれないぜ。
店のおじさんはワンタンを鍋にまさに放り込もうとしてる。
まずい!
しかし待てよ。俺は少し冷静になって壁に貼られたメニューをチェックする。
果たしてそこには「担々麺」の文字はなかった。
そして「ワンタン麺」は、そこに存在した。
意思疎通できてないのはこっちの方さ。
頭を冷やせ俺!
俺は安心して店を出た。